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医業経営ツールボックス 閉院編 Vol.7

◆Vol.7 設立後23年、経過措置型医療法人の今後に不安

23年前医療法人を設立(経過措置型医療法人)、経営は順調ですが、自身の年齢や健康上の不安もあり引退を考えています。患者様の事を考え、何らかの形でクリニックを継続したいのですが、息子も医師ながら後継に関しては未定です。経過措置型医療法人のままでの親族による継承? 息子が後継できない場合の継承など、現状でどのような選択肢が考えられるのかを知っておきたいのですが。

経過措置型医療法人は、新設は認められませんが継承は可能です。

健康上の不安を抱えておられるとのことで、現状で考えられる方法をまず列挙いたします。

1.親族による継承(本件の場合ご子息が継承)
2.第三者へ譲渡
3.他の医療法人との合併

上記3種の継承方法のうち、クリニック継承の場合は、上記「1.親族による継承」「2.第三者へ譲渡」が一般的に行われているものかと思われます。「3.他の医療法人との合併」は病院の場合に多くみられますので、今回のご質問に関しましては、1についてご紹介いたします。2については次回ご紹介いたします。

●親族による経過措置型医療法人の継承

◎ご親族による継承
継承のタイミングと共に贈与の時期をどのように考えるかが大切です。
現在も盛業中の場合、可能であればご子息様が週に1~2日程度勤務を継続、勤務先退職後は診療時間別などによりお二人での診療体制を継続、最終的にご子息様専任へ引き継がれる方法が理想的な継承と思われます。
このことは永年の患者様の戸惑いを考慮するだけでなく、ご子息様の勤務医から経営者への意識改革のための時間としても有益と考えます。

◎出資持分の継承方法
上記の継承手順が可能であれば、ご子息が法人社員(出資者)となるため、出資持分の一部贈与を贈与税の非課税内で複数年分割して行い、最終的に理事長(院長)交代時に旧理事長へ退職金を支給し、その段階で残り全ての出資持分移行を行う形態が、節税策として効果的と思われます。

法人の財務状況によっては、出資額を超えた出資持分の払い戻しや残余財産の分配を受けることが可能となります。この場合は、配当所得として課税されますので、親族への後継の折には、節税に対する方策をプロのアドバイスにより適切に行うことをお薦めいたします。
また、継承前に法人社員(出資者)が継承者や現院長以外に在籍する場合は(例:兄弟姉妹 他)、その社員(出資者)の出資持分をどのようにするかの確認が必須とお考えください。

経過措置型の医療法人(出資持分の定めがある)の場合、法人社員(出資者)の退職時に、出資額に応じた持分払い戻し権や、残余財産分配請求権があります。
その為、継承者以外の社員(出資者)がこの権利を行使した場合、法人財産を圧迫し運営が困難になることがあります。このような事態を回避するための配慮を忘れずに対応を行ってください。
「2.第三者へ譲渡」第三者への譲渡に関しては、次回ご案内いたします。

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