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  2. 特集「低線量被曝といかに向き合うか」試読ページ2
低線量被曝の健康影響
放射線による遺伝子障害に安全量はない

崎山比早子(さきやま ひさこ)
高木学校
元放射線医学総合研究所主任研究官

1966年千葉大卒.医学博士.マサチューセッツ工科大学研究員,放射線医学総合研究所主任研究
員を経て,99年高木学校メンバー(※).
※ 高木学校は,プルトニウムの危険性を訴え続けた物理学者・高木仁三郎が市民科学者を育成する
ために98年に創設した団体.


summary
低線量放射線被曝による発癌には“しきい値がない”すなわち安全量は存在しないという国際的な合
意が成り立っている.これまで被曝の健康リスクは“発癌”に特化して議論がなされてきた.しかし,
心臓血管系疾患をはじめ非癌性疾患が線量に依存して増加することは広島・長崎の追跡調査ですで
に明らかにされている.チェルノブイリ大惨事後25年,汚染地では子どもの健康被害が顕著に増加して
いる.福島ではその轍を踏んではならない.

はじめに─現在置かれている状況─
福島第一原子力発電所の原発震災発生から9カ月あまりが経つが,事故現場はこれからどうなるの
だろうか.1号機から3号機に穴があき,コンクリートにめり込んだ原子炉内にある合計257トンに及ぶ
燃料は今ただひたすら水をかけられており,炉内には水素が溜まり水素爆発の危険性も否定はでき
ない.

壊れた冷却プールには合計594トンもの使用済み核燃料があり,これらがこれからどうなるのか?
大きな余震が来たら? すでに日本国土を広範囲に汚染した大量の放射能はその地域の農林水産
業を崩壊させ,人々をその営みの土地から追い出した.子どもや妊婦を含め多くの県民は高度に汚
染されてしまった土地に住むことを余儀なくされており,その土地で作られた農作物には常に汚染の
心配がつきまとう.政府が決めた食品の規制値が高いために,市民はそれ以下なら安心して食べて
良いとは信じていない.どの講演会場に行っても「どの位の値ならば安全か」という質問を受ける.
米国科学アカデミー,国際放射線防護委員会(ICRP)や欧州放射線リスク委員会(ECRR)等の見解
は「放射線に安全量はない」であるため,その考え方に沿って防護することを勧告している.それに
基づいて解答すると,ゼロでなければ安全とは言えないが,そうすると食べられるものが激減する.
誰もが好むと好まざるとにかかわらず,汚染したものを食べることを強いられているのが現状だ.
外部からの被曝もまた我慢させられ,一般市民の被曝線量は上がっている.避けられない被曝が
増えることによって健康にどのような影響があるのだろうか?

福島原発事故が起きる以前は,公衆一般の被曝線量限度は年間1ミリシーベルト(mSv),放射線
作業従事者はどの1年間でも50 mSvを超えず,5年間で100 mSvを超えてはならないと決められて
いた.しかし事故後は早々に原発の事故処理にあたっている作業員の限度線量は250mSvまで引
き上げられた.また緊急時ということで福島県では児童生徒に年間20mSvまでは安全だとして,
公的には子どもを避難させようとはしていない.そればかりか最近では「100 mSv以下は健康に
影響があるという証拠はない」,さらに踏み込んで「100 mSv以下ならば健康影響はない」とまで
言う専門家が出てきた.そのため,「放射線の健康影響に関しては専門家の間で意見が分かれて
おり,国民は何を信じてよいか分からない状態になった」という声が聞かれる.

(本論の続きは、日本医事新報12月31日号をご覧ください) 

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