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センチネルリンパ節生検 手技・エビデンス・ピットフォール

センチネルリンパ節を正しく同定し、偽陰性をなくすには?

定価:12,650円
(本体11,500円+税)

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編集: 丹黒 章(徳島大学教授)
判型: AB判
頁数: 240頁
装丁: カラー
発行日: 2012年05月11日
ISBN: 978-4-7849-4324-1
版数: 第1版
付録: -

センチネルリンパ節を正しく同定し、偽陰性をなくすためにはどうすればよいか?
各分野のエキスパートが、自身の手技のコツ・診断上の工夫を紹介。
乳癌診療に携わる先生方必読の一冊です。
● センチネルリンパ節生検を行うにあたって知っておくべき局所解剖
各施設における手技の特徴と成績
● 手技のコツをステップごとにカラー写真で紹介
● 病理診断の方法と課題
● 非浸潤癌への適応、術前化学療法後リンパ節生検の信頼性

診療科: 外科

目次

第1章 乳癌センチネルリンパ節生検:日本の現状と海外の動向

第2章 乳癌センチネルリンパ節生検:国内臨床試験の結果と展望

第3章 センチネルリンパ節生検に必要なリンパ管とリンパ節の解剖

第4章 センチネルリンパ節の画像診断

リンフォシンチグラフィ①
リンフォシンチグラフィ②
造影CTおよび磁性体造影剤SPIOを用いたMRIによる乳癌センチネルリンパ節転移診断
3D-CTリンパ管造影
腋窩リンパ節の評価:MRI,PET-CT,超音波とCTLGの比較

第5章 センチネルリンパ節の同定法と生検手技
色素法・アイソトープ法①
色素法・アイソトープ法②
色素法・アイソトープ法③
色素法・アイソトープ法④
色素法・アイソトープ法⑤
ICG蛍光法① 赤外線観察カメラシステムPhotodynamic Eye(PDE)を用いたICG蛍光法
ICG蛍光法② カラー蛍光カメラHyper Eye Medical System (HEMS)を用いた乳癌センチネルリンパ節生検
CTLGで描出されたセンチネルリンパ節の生検手技
Virtual sonography法①
Virtual sonography法②
内視鏡下センチネルリンパ節生検①
内視鏡下センチネルリンパ節生検②
Lap-Protector法:センチネルリンパ節生検の安全な習得のために

第6章 センチネルリンパ節の転移診断法
迅速病理診断①
迅速病理診断②
OSNA法
転移診断に関する問題点

第7章 乳癌センチネルリンパ節生検のピットフォール
ピットフォール①
ピットフォール② 偽陰性について

第8章 センチネルリンパ節生検とリンパ浮腫

第9章 消化管癌のセンチネルリンパ節生検
消化管癌におけるセンチネルリンパ節理論と同定手順
胃癌センチネルリンパ節生検の現状と臨床応用
食道表在癌に対するCTLGを用いたセンチネルリンパ節診断

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序文

1894年に発表されたHalsted手術以降、100年間にわたって、癌の治療は手術が中心であり、en bloc切除が基本であった。ホルモン療法が奏功する乳癌では、他の固形癌に先んじて、癌をsystemic diseaseと捉え、術後補助療法が確立された。そして、1980年代に発表された根治的郭清術と腋窩放射線治療の長期成績に差がないとするNSABP-B04の大規模比較試験の結果と、1990年代に登場したセンチネルリンパ節(SLN)理論は、癌治療の基本であったen bloc郭清の意義を大きく覆すことになった。

腋窩郭清の省略が、術後の腕の浮腫や知覚・運動障害などの合併症を軽減させることから、SLN生検は瞬く間に普及した。1990年に日本で初めて行われた腹腔鏡下胆嚢摘出術が、1992年には保険適応になったように、先進医療として行われていたSLN生検は、日本乳癌学会が主導した多施設共同試験において安全性が証明されると、2010年4月に保険適応となり、現在、多くの施設では郭清が省略されるようになっている。

€さらに、最近発表されたACOSOG Z0011試験の結果は、SLNに転移を認めても、それが2個以内であり、術後照射と適正な術後療法が行われれば、腋窩郭清を省略できる可能性を示した。この臨床試験の結果が腋窩郭清の回避に拍車をかけることは明らかであるが、SLNが正しく同定、生検されているという大前提が担保されていなければならない。

SLN生検に関しては、いかに正確にSLNを同定し偽陰性をなくせるか、生検すべき適正なリンパ節の個数、転移リンパ節の術前診断、SLN生検でも起こりうる上肢浮腫をなくすための方策、病理診断の方法、非浸潤癌への適応、術前化学療法後のSLN生検の信頼性、消化器外科領域での有用性など、未だ解決されていない多くの課題が存在する。

本書はこれらの課題に応えるべく、全国の第一人者の先生方にお願いして、各施設におけるSLN生検の手技の実際や、エビデンス、ピットフォールを中心に、現時点でのスタンダードについてご執筆いただいたものである。日本医事新報社の協力により、カラー写真・イラストを多用したビジュアルな解説書として上梓することができた。

医療の進歩は著しく、日々新技術が開発される。この本に書かれた最新の技術が過去のものになり、新しく改編される日が来ることも大きな楽しみである。

€2012年4月 丹黒 章

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レビュー

【書評】各施設で培ってきた経験と知識の整理に役立つ好著

霞 富士雄氏(日本乳癌学会名誉会長)
徳島大学丹黒 章教授の編集による本書は,これまでに我が国でなされてきたセンチネルリンパ節生検(SNB)に関する事項が網羅され,各分野で活躍中の分担執筆者がその経験と主張を述べており,幅広く,そして深くSNBの全容に触れた初めての解説書である。

内容は,SNBの歴史,画像診断,SNの各種同定法と生検手技,転移診断法,ピットフォール,リンパ浮腫,消化器癌でのSNBに分かれている。各項ともカラー画像,術中写真,図表が実に多く多彩で臨場感にあふれ,視覚によって文章の理解を容易にしている。

我が国においてSNBが一般化した現在,本書は各施設で培ってきた経験と知識の整理に役立つことは明らかで,経験したことがないものを識る喜びも大きい。特に画像診断の新しい分野など大いに参考になる。永年SNBの臨床研究に励んでこられた編集者を中心に,各項目の分担執筆者の成果の発表は緊張感があり,重量感のある専門書となっている。

以上の読了感以外に私見を述べたい。摘出したSNの薄層切片と癌組織・細胞の各種同定法によって,腋窩リンパ節郭清より詳細なnの状態把握を可能とし,かつQOLを向上させたSNBの貢献は絶大である。

一方,SNB以外でもm(mar)などのDTC,CTCをはじめ癌の初期からの全身波及を示す事実が明らかとなり,nとの相関が問われている。SNBの抱える弱点,FSやPSルートの等閑視を飲み込んでも局所制御や予後に大きく響かないという事実はどう考えるべきか。癌の本態はもっと深くにあり,SNBのあくなきn追求はこれを見据えていないのではないかと,冷めた立場から案じる。

手術や放射線療法による局所制御と根治は別次元のものであって,化学療法・ホルモン療法の駆使によって初めて根治が達成できるという癌の本態を,SNBから浸み出る教訓として主張してもらいたかった。改版時にかなえてくださるようお願いする。

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