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Primary care note めまい・難聴・耳鳴

一般内科医がめまい・難聴・耳鳴を診る際に!

定価:3,850円
(本体3,500円+税)

在庫切れです

著: 小田 恂(東邦大学名誉教授)
判型: A5判
頁数: 186頁
装丁: 2色刷
発行日: 2005年03月15日
ISBN: 978-4-7849-4255-8
版数: 第1版
付録: -

第一線の内科医には,高血圧や糖尿病などの生活習慣病で通院中の患者から,耳の症状について相談を持ちかけられるケースは少なくありません。
めまいや難聴を診断するための特別な検査機器のないプライマリ・ケア医を対象とし,一般的な設備や神経診断学のための簡単な検査器具しかない診療所を想定した役立つ一冊です。

診療科: 内科
シリーズ: Primary care note シリーズ

目次

1.めまいとは
1 耳の構造
1.外耳と中耳
2.内 耳
2 めまいとは

2.身体平衡のしくみと働き
1 前庭系の働き
1.耳石器と半規管の働き
1)耳石器
2)半規管
2.前庭反射
1)前庭眼反射(vestibulo-ocular reflex)
2)脊髄前庭反射(vestibulo-spinal reflex)
3)前庭自律神経反射
2 視運動系の働き
3 深部知覚系の働き
1)感覚伝導路
2)運動伝導路
3)深部知覚系の働き

3.めまいの分類
1 性状による分類(回転性めまいと非回転性めまい)
1.回転性めまい(vertigo)
1)回転性めまいだけを訴える場合
2)回転性めまいに難聴など蝸牛症状を伴う場合
3)回転性めまいに激しい頭痛を伴う場合
2.非回転性めまい(dizziness)
2 病期による分類(急性めまいと慢性めまい)
1.急性めまい
1)意識障害あり
2)意識障害なし
2.慢性めまい
3 病巣による分類(末梢性か中枢性か)
1.末梢性めまい
1)急性片側性末梢前庭障害
2)慢性片側性末梢前庭障害
3)両側性末梢前庭障害
4)耳石器の障害
2.中枢性めまい

4.外来におけるめまい診療
1 めまい診療の基本的スタンス
1.問診の前のチェックポイント
2.めまい患者に対する対応―まず行うこと―
1)意識障害がある場合―専門医療施設へ―
2)意識障害がない場合―安静の確保―
2 インタビュー―面談によるめまいの情報収集―
1.めまいの発症の状態
1)発作性めまい
2)非発作性めまい
2.めまいの性状
1)回転性めまい
2)非回転性めまい
3.めまいの経過・持続
4.随伴する症状
5.合併疾患・服用中の薬剤
3 めまい以外の検査
1.初期医療におけるめまいの検査
2.一般的検査
1)理学的検査
2)全身的検査
3)眼球に関する所見
4)精神神経学的検査
4 めまいの検査
1.四肢・躯幹の平衡機能検査(前庭脊髄反射系の検査)
1)上肢の偏倚検査
2)下肢の偏倚検査
2.眼球の平衡機能検査
1)眼振の検査
2)異常眼球運動

5.頻度の高いめまい疾患
1 末梢性めまい疾患
1.Meniere病(メニエール病)
1)Meniere病とMeniere症候群
2)臨床的特徴
3)病 因
4)診 断
5)検 査
6)治 療
2.良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo;BPPV)
1)臨床的特徴
2)診 断
3)臨床症状
4)眼 振
5)病 因
6)治 療
3.前庭神経炎
1)臨床的特徴
2)病 因
3)症 状
4)診 断
5)治 療
4.中毒性平衡障害
1)臨床的特徴
2)原因となる薬物
3)問診の重要性
5.聴神経腫瘍
1)聴神経腫瘍とは
2)症 状
3)診 断
4)治 療
2 中枢性めまい疾患
1.中枢性疾患によるめまいの一般的特徴
1)緩徐に発症するめまい
2)急激に発症するめまい
2.脳幹の疾患
1)中脳の疾患
2)橋の疾患-内側縦束症候群(MLF症候群)
3)延髄の障害―Wallenberg症候群(延髄外側症候群)
3.小脳疾患
1)脊髄小脳変性症
2)小脳腫瘍(正中部腫瘍,半球腫瘍)
3)小脳出血
4.脳血管障害
1)脳血管疾患の分類
2)めまいの原因となる脳血流と閉塞症状
3)椎骨脳底動脈不全症
4)鎖骨下動脈盗用症候群
3 その他のめまい疾患
1.心因性めまい
1)心因性めまいとは?
2)患者の心理
3)患者の性格
4)いろいろな診療科を受診するめまい患者
5)治 療
2.頸性めまい
1)頸性めまいの分類
2)検 査
3)疾 患
3.動揺病
1)動揺病とは?
2)原 因
3)症状発現のメカニズム
4)症 状
5)治 療

6.めまいの治療
1 めまい治療の基本
1.めまいの性状の把握
1)診察までの状態
2)訴えはめまいだけか? めまい以外に他の症状はないのか?
3)めまいの性状は? グルグルめまいかフラフラめまいか
2.受診時のめまいは?
1)急性めまい
2)慢性めまい
2 急性期めまいのプライマリ・ケア
1.急性期めまいに対する対応
1)まず行うことは―意識障害の判定
2)めまいに関する情報収集
3)検 査―手際よく行うこと―
2.急性期めまいの治療
1)専門医療機関に紹介
2)プライマリ・ケア―めまい患者の初期治療―
3.プライマリ・ケア後のめまい管理
1)プライマリ・ケア後の診療
2)発作後のめまいの治療
3 慢性めまいのケア
1.慢性めまい患者に対する対応
1)初診患者への対応
2)インタビュー
2.慢性めまいの治療
1)末梢性めまい
2)中枢性めまい
3.鎮暈薬

7.めまいの平衡訓練と運動療法
1 めまいのリハビリテーション
1.めまい・平衡障害におけるリハビリテーションの役割
2.前庭代償の機序
3.リハビリテーションの実際
1)平衡訓練法の実際
2)Brandt-Daroff法
2 リハビリテーションの評価
1.障害の階層性
1)機能障害(impairment)
2)能力障害(disability)
3)社会的不利(social handicap)
4)心理的障害(illness)
2.めまい・平衡障害の評価
3 めまいの運動療法
1.良性発作性頭位めまい症の病理
2.さまざまな運動療法
3.家庭における運動療法

8.代表的めまい症例
1 Meniere病
2 良性発作性頭位めまい症
3 前庭神経炎
4 突発性難聴
5 高齢者のめまい

9.難聴と耳鳴
1 難聴や耳鳴を訴える患者への対応
1.耳鼻科医の難聴者に対する対応
1)問 診
2)視診,触診
3)耳鏡検査
4)聴力検査
5)その他の聴覚検査
6)画像検査
2.耳鼻咽喉科以外の診療機関での対応―音叉による検査―
1)Weber検査
2 耳 鳴
1.難聴と耳鳴
2.耳鳴の検査
1)耳鼻科医の耳鳴に対する対応―耳鳴検査―
2)耳鼻咽喉科以外の診療科における耳鳴への対応 ―自覚的表現について―
3 難聴各論
1.伝音難聴
1)耳管狭窄症
2)耳管開放症
3)滲出性中耳炎
4)急性中耳炎
5)慢性中耳炎
6)耳硬化症
2.感音難聴
1)内耳炎
2)流行性耳下腺炎
3)風 疹
4)薬剤性難聴
5)全身疾患と難聴
6)老人性難聴
7)音響性難聴
8)幼小児の難聴
9)突発性難聴
10)聴神経腫瘍

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序文

めまいや難聴・耳鳴に対して特別の診療機器や高度な画像診断機器をもたない、診療最前線にいる内科医の対応の仕方について書くようにというのが編集部からの依頼であった。

めまいはともかく、難聴や耳鳴だけでそれ以外の症状がない場合には耳鼻科を訪れるのが普通であるが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病で通院中の患者から耳の症状について相談をもちかけられた医師は少なくないと思う。

一方、症状によってはさまざまな診療科の医師が診療にあたる場合もある。めまいはそのような症状の1つで、耳鼻咽喉科、内科、神経内科、脳神経外科などの医師が主に診察を担当している。
かつて、めまいは脳出血など頭蓋内疾患の症状と考えられていた。19世紀の中葉にMénièreが発作性のめまいに難聴・耳鳴を合併した患者を剖検して、脳や脊髄には異常がなく、内耳に出血がみられた症例を報告したことによって、めまいの原因となる病態生理の1つとして内耳の異常による場合があることが明らかとなり、内耳性めまいの存在がクローズアップされるようになった。
このように、めまいに関する研究はMénière病など内耳疾患による末梢障害や脳幹の出血や梗塞などの中枢障害を巡って展開され、めまいの発症機構が次々に解明されるようになった。
本書は主として内科診療を担当している医師を対象に、特にプライマリ・ケアに重点を置いて解説したが、その理解を助ける意味で身体平衡のしくみや内耳の構造について若干ページを割いた。われわれが何気なく日常の立ち振る舞いを行えるのも身体平衡機能が正常に機能しているからである。スケートやバスケットボール、サッカーなど動きの激しい運動選手の姿勢反射を思い出してほしい。優れた運動選手は身体の平衡維持機構が鋭敏に働き、美しい姿勢反射を示すことが理解されよう。身体の平衡に関わる入力情報は視器、内耳、筋肉・腱などから入力され、脳幹に伝えられ、さらに小脳などと複雑な神経のネットワークを作っている。このような神経系のどこかに故障が生じると、グルグル回転するようなめまいが生じたり、身体がフラフラしたり、フワフワ浮いたような感じになったり、目の前が真っ暗になったりする。難聴や耳鳴はほとんどの例が中耳や内耳の障害によるものであるが、その程度や性状の診断となると簡単ではない。このような、平衡機能や聴覚機能についての精密な診断のためには専用の検査機器や刺激を負荷する検査が必要である。
本書は、めまいや難聴を診断するための特別な検査機器のないプライマリ・ケアを担当する医師を対象としているので、診療机、椅子、ベッドなど一般の診療室に備わっている設備や神経診断学のための簡単な検査器具しかない診療所を想定して記述した。めまいは専用の検査機器を用いて検査を進めると精度の高い診断ができるが、初期診療においてめまいに関するエピソードを注意深く聞き、眼振検査や身体の偏倚検査を行うことで、かなりの程度の診断が可能である。本文中で再三述べたが、病歴を注意深くとり、現症を正確に把握することがめまいの診断には必要である。難聴に関しても音叉を用いて音の偏倚を調べると、難聴の定性的な検査が可能である。
このように、初期医療では患者のケアを第一に考えたうえで、もてる力を最大限に発揮して診断から治療に移るのが重要で、さらに進んだ検査が必要な場合には専門の診療科に診療依頼をするのが望ましい。

2005年2月 著者

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レビュー

Primary care note めまい・難聴・耳鳴 自著紹介

小田 恂(東邦大名誉教授)
めまいはともかく、難聴や耳鳴だけでそれ以外の症状がない場合には耳鼻科を訪れるのが普通であるが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病で通院中の患者から耳の症状について相談をもちかけられた医師は少なくないと思う。一方、めまいは様々な診療科の医師が診療にあたる場合が多く、耳鼻咽喉科、内科、神経内科、脳神経外科などの医師が主に診察を担当している。

本書は主に内科診療を担当している医師(めまいや難聴を診断するための特別な検査機器のないプライマリ・ケア医)を対象として、これら疾患の初期診療を中心に解説したが、その理解を助ける意味で身体平衡のしくみや内耳の構造についても若干ページを割いた。

診療机、椅子、ベッドなど一般の診療室に備わっている設備や神経診断学のための簡単な検査器具しかない診療所を想定して記述したので、医学生・研修医に読んでいただくにも相応しい内容であると思う。是非ご一読いただきたい。

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