初版から10年以上が経過し,マンモグラフィによる乳がん検診はわが国において標準的な検診として定着してきた。旧来の視触診時代には検出不能であった非触知乳がんの発見が著しく増えたことから,診断プロセスであるマンモトーム下生検や,超音波ガイド下コア生検,あるいはMRIやCTによる乳がんの術前拡がり診断など,乳がん診療も格段の進歩を示している。また,フィルムスクリーンシステム(アナログ)からデジタル撮影・ビューア診断へと大きな変化が起こった。乳がん検診方法を適正な画像診断に切り替えることによって,かくも乳がん診療がレベルアップされたことは多くの方々の実感かと思っている。結果として乳がん患者さんのQOL向上,および死亡率減少に結びつくことを確信している。
一方で,米国予防医学専門委員会(USPSTF)が乳がん検診に関する推奨度を改定したように,マンモグラフィ検診では利益(benefit:乳がん死亡率減少効果)のみならず,不利益(harm:要精検率が高いことや,がんではなかった人に対する不必要な検査,臨床的に問題にならないがんに対する治療等)についても論じられる時代になった。40歳代では15%程度の乳がん死亡率減少効果はあるものの,50歳代以上に比べてネット利益(利益−不利益)が小さくなることが指摘されている。USPSTF報告書を受けて,わが国でもデータを集積し一部は解析済みであるが,当面は,現行の推奨(マンモグラフィ隔年検診,40歳以上)を継続することが妥当であると判断している(第12章で詳述)。
もう1つの大きな流れとして,40歳代における超音波による乳がん検診の標準化と有効性の検証が挙げられる(がん対策のための戦略研究,J-START)。日本では乳がん罹患率が40歳代で高く,この年代はマンモグラフィ上,高濃度乳房が高率であることから新たな検診法として超音波検査が注目されている。J-STARTはマンモグラフィ+超音波がどこまで有効かを見きわめるランダム化比較試験である。現在,登録者数約8万人という,世界でこれまで例を見ない大規模臨床試験が進行中である。
がん検診のあり方は,科学技術の進歩のみでなく検診を受ける人の行動にも大きく影響される。進化し続ける乳がん検診,第5版ではその進化を反映して大幅な改定を行った。本書が乳がん検診および診療に携わる医療関係者,検診の推進に尽力されている行政担当者,事業所等の皆様のお役に立つことを願っている。